ベズーの等式とは
初等整数論でよく知られている定理として, ベズーの等式というものがあります。
ベズーの等式は, 整数\(a, b, c\)に対して1次不定方程式\(ax+by=c\)が整数解をもつかどうかを調べられる強力な定理です。
※ベズーの等式は, 等式ではなく定理です。名前からすると等式を指しているように聞こえますが, そうではなくて以下の定理のことをいいます。
\(a,b\)を\(0\)でない整数とし, \(d\)を\(a\)と\(b\)の最大公約数とする。
このとき, \(ax+by=d\)をみたす整数\(x, y\)が存在する。
ベズーの等式の例
以下, 整数\(a, b\)の最大公約数を\(\gcd(a, b)\)と書くことにします。
例
\(\gcd(9, 6)=3\)なので, 方程式\(9x+6y=3\)は整数解をもつ。
実際, \(x=-1, y=2\)は解になっている。
例
\(\gcd(5, 10)=5\)なので, 方程式\(5x+10y=5\)は解をもつ。
実際, \(x=3, y=-1\)は解になっている。
ここでは実際に整数解を見つけていますが, ベズーの等式を用いれば, 実際に解を見つけなくてもこれらの1次不定方程式が整数解をもつことがすぐにわかりますね。
ベズーの等式の特別な場合
上のベズーの等式において\(d=1\)として, 以下の定理を得ます。
\(a\)と\(b\)が互いに素であるとき, すなわち\(\gcd(a, b)=1\)であるとき, \(ax+by=1\)を満たす整数\(x, y\)が存在する。
例
\(\gcd(13, 19)=1\)であるので, \(13x+19y=1\)をみたす整数\(x, y\)が存在する。
ベズーの等式の証明
ベズーの等式を証明していきましょう。割り算の余りを用いて考えることがポイントになります。
以下, 整数の集合を\(\mathbb{Z}\)とします。
ベズーの等式の証明
$$A=\{ax+by \mid x, y \in \mathbb{Z}, ax+by > 0\}$$
とする(つまり, \(A\)は整数\(x,y\)を用いて\(ax+by\)と表せる正の整数全体の集合)。
\(A\)に属する整数のうち最小のものを\(m\)とする。\(m\)は\(A\)の要素であるので, \(aX+bY=m\)となる整数\(X, Y\)が存在する。
\(a\)を\(m\)で割った商を\(q\), 余りを\(r \ (0 \leqq r < m)\)とおく。すると\(a=mq+r\)より\(r=a-mq\)であるので
$$r=a-mq=a-(aX+bY)q=a(1-qX)+b(-qY)$$
となる。
\(1-qX\), \(-qY\)はともに整数なので, もし\(r>0\)であれば\(r\)も\(A\)の要素となる。しかし\(r<m\)なので, \(r\)は\(A\)の最小値より小さいことになり矛盾。よって\(r=0\)である。
\(a=mq+r\)より\(a=mq\)なので, \(m\)は\(a\)の約数である。同様に, \(m\)は\(b\)の約数である。
これより\(m\)は\(a\)と\(b\)の公約数であるので, \(m \leqq d\)となる。
一方, \(a\)と\(b\)はともに\(d\)の倍数なので, \(m=aX+bY\)は\(d\)の倍数で正のもの, すなわち\(d, 2d, 3d, \ldots\)のいずれかである。
よって\(m=d\)である。
したがって\(aX+bY=d\)であり, 1次不定方程式\(ax+by=d\)は整数解をもつことがわかった。
ベズーの等式の拡張
上で見たベズーの等式は, 1次不定方程式\(ax+by=d\)が解をもつということを示す定理でした。
実は, より一般に次のことが成り立ちます。
この定理を用いると, 1次不定方程式がいつ整数解をもつかだけでなく, 逆にどんなときに整数解をもたないかまでわかります。
これはベズーの等式の拡張になっています。
\(a, b\)を\(0\)でない整数とし, \(c\)を整数とする。\(d=\gcd(a, b)\)とする。
このとき, 1次不定方程式\(ax+by=c\)が整数解をもつための必要十分条件は, \(c\)が\(d\)の倍数であることである。
この定理は, 1次不定方程式\(ax+by=c\)が整数解をもつための必要十分条件を与えています。
つまり, \(a, b, c\)の関係を調べるだけで, 整数解をもつかどうかをYES/NOで答えられるということです。
証明
\(c\)が\(d\)の倍数であるとする。
仮定より, \(c=c’d\)となる整数\(c’\)が存在する。
ベズーの等式から, \(aX+bY=d\)となる整数\(X, Y\)が存在する。
両辺に\(c’\)をかけると, \(a(c’X)+b(c’Y)=c’d\), すなわち\(a(c’X)+b(c’Y)=c\)となる。
\(X’=c’X, Y’=c’Y\)とおくと, \(X’, Y’\)は整数で, \(aX’+bY’=c\)をみたす。
したがって方程式\(ax+by=c\)は整数解をもつ。
逆に, 方程式\(ax+by=c\)が整数解をもつとする。
\(a, b\)はともに\(d\)の倍数なので, \(a=a’d, b=b’d\)となる整数\(a’, b’\)が存在する。
仮定より\(aX+bY=c\)となる整数\(X, Y\)が存在し, \(c=a’dX+b’dY=(a’X+b’Y)d\)で\(a’X+b’Y\)は整数なので, \(c\)は\(d\)の倍数である。
例
\(\gcd(4, 6)=2\)で, \(8\)は\(2\)の倍数なので, 方程式\(4x+6y=8\)は整数解をもつ。
実際, \(x=2, y=0\)は解になっている。
例
\(gcd(12, 18)=6\)で, \(42\)は\(6\)の倍数なので, 方程式\(12x+18y=42\)は整数解をもつ。
実際, \(x=2, y=1\)は解になっている。
逆に, 与えられた方程式が整数解をもたない場合もあります。
例
\(\gcd(6, 8)=2\)であるが, \(5\)は\(2\)の倍数でないので, 方程式\(6x+8y=5\)は整数解をもたない。

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